2006年06月19日

治療プログラム(9)

第9回(2006年6月7日 水曜日)


ママが学校に来ると、僕のクラスの女の子達が、ママが通るのを見つけ手を振っていた。
その中の一人が、僕にママが来たことを教えてくれて、僕も窓のところに行って手を振った。

その姿は、ママの目にはまだまだ幼く、か弱く映った。私が守らなければ。。。

そんな思いが、ママの心を強くさせ、緊張しながらも、いつもより力強く、入り口のドアを開けた。

今回は、僕は一つ椅子を置いて、戸を押さえておいた。

アシスタントの先生は、「これで、私もさびしくないわ。Thank you!」といって、いつものように廊下に椅子を置いて座った。

僕はまず、ドールハウスの人形から遊んだ。猫を見つけると、すかさず先生の所へ行き、それを見せた。

「What’s this?」
「……………」
「Is this a dog?」

僕はうなづいた。
「Is it?」

僕達がそんなやり取りをしている間、ママは、おもちゃの電車を取り出して、人形達を乗せた。僕はそっちの方が面白そうだったので、ママの所へ戻った。そして、電車をカーペットの上で走らせながら、また先生の所へ行った。

「Where are you going?」
「………………………」
「I want to know where you are going….」
「………………………」
「Are you going to London?」
ママが助け舟を出すと、僕はうなづき、また部屋の中へ戻った。

僕はしばらくママと電車で遊んでいたが、ママに人形を指差しながら、囁いた。

「これは、MUM。これは、SISTER。」
「あー、そーなの。」

先生は、これを聞き逃さなかった。すかさず、

「I heard you say sister, thank you. I’m very happy」

僕は、また黙ってしまった。


またまた、ママの疑問がわいて来た。

これはマニュアルに書いてあるのか?
スピーチセラピストのアドバイスか? そうかもしれない。だって、僕が先生に中に入って欲しがったら、入って欲しいって言ったら、中に入るよ、って言うようにアドバイスを受けたって、言ってたから。
僕がしゃべっても、ほっといてくれれば、続けてしゃべるのに。。。

その後は、僕は無言で静かに電車を走らせているだけだった。

ママは、困って、ええい、ままよーっと、僕から電車を取り上げ、勝手にものすごいスピードで部屋中を走らせた。

僕は、きゃっきゃ言いながら、ママの所を追いかけた。

ほら、声がでてるでしょ?
こんなふうに体全体で楽しんでいるうちに、ガードが取れて自然に話すようになるんだよ、先生。


posted by なんでさん at 13:49| Comment(4) | TrackBack(1) | 場面緘黙症治療(Reception Year) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんでさん、こんにちは。またお邪魔してます。
アシスタントの先生と話し合えて良かったですね。
ところで、夏休みの対策はもう立てられましたか?
私は昨年何もできなかったので、今年こそ新学期に向けて作戦を練ろうと思っています。
夏休み中に一度でもいいから新担任に会わせてもらい、新しい教室も見学させてもらって、少しでも新しい環境に慣れさせようというのが私の計画。先生は新学期が始まる一週間前から学校に出てきているらしいので、その時がチャンスかなと。
今月末にSENCOとのミーティングがあるので、その時に提案してみるつもりです。
夏休み中もどうにかしてサマーキャンプとかに参加させたいのだけれど、今年は無理かも...。
なんでさんとkikiさんのところは、どうなさってますか?良かったらアドバイスくださいね。
Posted by みく at 2006年06月19日 17:56
はじめまして。僕は弥生桜と申します。

僕は元場面緘黙症(SM)で、現在30代の会社員なのですが、SM真っ只中のときはほったらかしにされ、今もSMの後遺症を色濃く引きずって生きづらさを感じています。

昨年8月より、自分の内面と向き合うために、またSMの経験者たちと交流するために、主にSMをテーマにしたブログを綴っています。

僕は日本や欧米でのSMに対する取り組みをインターネットベースで個人的に調べており、欧米ではこの15年ほどの間に著しくSMに対する研究が進み、実践的な治療プログラムが各所で確立されていることを知りました。そして、その治療プログラムにより多くのSM児が実際にSMを克服していることを知りました。
また、最新の研究の成果として、ここ数年の間にとくにアメリカでSMに関する専門書が出版が相次いでいます。
さらに、アメリカでは6年ほど前に本格的なSM児の保護者支援団体(SMG-CAN: Selective Mutism Group - Childhood Anxiety Network)が創設され、全米各地で精力的に活動していることを知り、驚きました。

それに対して日本では、なんとSMを専門とする機関や研究者が存在せず、欧米での最新の研究成果がまったく取り入れられていないことがわかりました。
唯一、一般向けに書かれた場面緘黙症の専門書が一冊だけ存在しますが、それも20年以上前の研究データに基づいて書かれた古い書物で、私たち日本人は場面緘黙症の知識を得るのにそんな古い本に頼らざるを得ない状況です。

ですから、日本では依然としてSM児は特別な治療プログラムも受けていない子供が大半です。
実際、僕はブログ等で多くの元SM児の方々と交流していますが、学校や家ではほとんどほったらかしにされていた人ばかりです。中には、教師や親から喋らないことを理由に責められて心に傷を負ってしまった人たちがたくさんいます(僕も含めて)。

僕は、カナダのSM治療の実績ある専門家らにより昨年出版された本(Helping Your Child with Selective Mutism)を入手して原語で読みました。
その本は保護者向けに平易な英語で書かれており、治療プログラムのためのマネジメントチームの作り方から治療プログラム構築の手法を手取り足取り細かく解説した、いわばSM治療のマニュアル本のようなものです。
その本による治療プログラムは、今までのところなんでさんの書かれた治療経過を拝見するかぎり、そちらのマギー・ジョンソン先生による治療プログラムと非常に似ています。
ですので、最近なんでさんのブログを拝見するようになり、確立された治療プログラムを実践している実例としてたいへん参考にさせていただいています。

僕は自分が「場面緘黙症」であったことを30歳を過ぎてから初めて知りました。それも偶然に。
そしてなぜ当事者の自分がこれまでSMのことを知らされたことがなかったのか、たいへん理不尽な気持ちを抱きました。

調査をするうちに理由はすぐわかりました。
日本ではSMの専門家がいない、つまり情報を発信する人がいないからです。だから、場面緘黙症という言葉も知らない教師やカウンセラーたちがたいへん多いのです。

僕は、欧米で行われている研究の最新の潮流をなんとか日本に伝えられないだろうかと考えるようになりました。
いろいろ考えた結果、まず、自分が読んだHelping Your Child with Selective Mutismを日本で翻訳出版する構想を作りました。
これはSM児を育てる保護者の方々に待望の書であることに間違いないと確信したからです。

オラニオス君はイギリスにお生まれになって幸運だったと思います。

日本でも、オラニオス君のように、どのSM児も最新の知見に基づいて確立された治療プログラムが受けられるようになることを願っています。

長文になり失礼しました。
これからもオラニオス君の治療経過を見守らせていただきます。
どうぞよろしくお願いします。
Posted by 弥生桜 at 2006年06月19日 23:21
みくさん、おはようございます。
ハイ、私もTAに話すことが出来て、一安心というところです。背中を押して下ってありがとうございました。
 さて、夏休みの対策ですが、今年は、一ヶ月程日本に帰る予定なので、そのことばかりで、何もたてていないというのが現状です。日本では、いろんなところに行ったり、人に会ったりして、楽しんで来ようと思います。息子は人が大勢いるところは、苦手なので、嫌がったら無理強いしないようにして。日本の夏は暑いですが、いっぱいイベントがあって、私は楽しみにしています。自分が楽しめば、息子も楽しむに違いないと、勝手に思っています。何かにつけて、私が沈んでいると、笑って!という子ですから、私が笑顔で過ごせたら、それが一番かもしれませんね。
 学校のほうは、そろそろ9月から入学する子供達が学校体験として、週に2回、2グループに分かれて、3回にわたって学校に来るので、そのときに、息子の学年、Y1の子供達は、Y1、Y2の新しいクラスと先生に会って、その時間を過ごすと聞いています。そして、7/13日には、Change over dayといって、一日、新しい学年として、過ごすらしいです。
 それと、治療プログラムが始まる前のミーティングの時にも、次学年への対策として、新しいクラスと担任が決まったら、すぐに息子に伝えて、心構えが出来るように、次学年でかかわってくる人々も、SMの講義に出席してたほうがいい、などが、話し合われたと、記憶しています。
息子も、最近、イエロークラスにいつ行くの?と聞いてくるので、9月からのことは、聞かされているんじゃないかと思います。
 なので、私は、あまり何も考えていなかったのですが、学校が始まる前に、先生に個人的に会える機会があったら、より良いですよね。また、ミーティングがあったら、話してみます。
 サマーキャンプ、ご家族で参加できるものからはじめてみては、いかかですか?去年、イギリス人の知人が子供連れで、キャンプに参加してきたような事を言っていたのを思い出しました。子供向けのもので、いろんなイベントもあり、工作もしたり、と楽しそうでしたよ。子供がそこで作ったものを学校に持ってきたような....。でも、夏じゃなかったかも....。今度あったときに確認してみますね。
Posted by なんでさん at 2006年06月20日 13:48
弥生桜様

はじめまして。ブログへの訪問、そしてコメントありがとうございました。それから、弥生桜様ご自身のブログでも、このブログを紹介いただきまして、ありがとうございました。

私は、今年の2月に場面緘黙症のことを知り、インターネットで情報を集めていたときに、弥生桜様のブログも見つけ、ずいぶん勉強させていただきました。

その時期は、2月のハーフターム休暇が始まる前で、その休暇が終わると、保護者面談がある予定だったので、それまでに、私がSMに関して、詳しく知っておきたいと思い、紹介されていた本, Helping Your Child With Selective Mutism も早速買い求め読みました。

保護者面談で、SMのことを切り出すと、知ってはいるが、詳しくは分からないので、イースター明けにSMを学ぶコースに、担任自らアシスタントと共に出席するということを聞いて、積極的に、息子をサポートしようとしてくれる姿勢がうかがわれ、大変ありがたく思いました。

丁度、タイミングよく、SM児のTVドキュメンタリーがイースター休暇中に放映されて、さらに理解度が深まったと思われます。

このように、日本に比べ、こちらでは、SMに関する関心度も高く、そして治療プログラム、サポート体制も、かなり整っていると思います。マギー、ジョンソンというスピーチセラピストは、SM児の治療に20年間も携わっているそうです。(30年という説もありますが)

弥生桜様の “オラ二オス君はイギリスにお生まれになって幸運だったと思います。”とのお言葉、深く心に染みました。

私も、日本でも早く、SM児が適切な治療の元で、SMを克服できるような体制が整っていく事を願っています。

記事の投稿だけで精一杯のブログですが、弥生桜様を初め、他の方々のコメントも非常に参考になります。

今後もどうぞよろしくお願いいたします。


Posted by なんでさん at 2006年06月20日 20:57
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場面緘黙症の治療プログラムの実践を綴ったブログの紹介
Excerpt: 最近、場面緘黙症の息子さんをもつ母親が我が子の治療プログラムを綴った「僕はオラニオス」というブログを見つけ、読んでいます。
Weblog: ほんとうは暖かい光が好き
Tracked: 2006-06-19 11:07
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